外伝 ウカ・イナオセ編
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米の収穫を司る豊穣神ウカと、そのお供のチュン坊。 | ||
彼女たちは、米不足にあえぐ下界を救うために、各地を巡る旅の最中にあった。 | ||
時には、干上がった水田のために雨を降らしたり……。 | ||
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![]() | 雨ェ~雨ェ~、降れ降れェ~、キェ―――!! | |
チュ――ン! | ![]() | |
より多くの稲穂が実るよう働きかけたり……。 | ||
![]() | 米ェ~米ェ~、実れ実れェ~、穂ァ―――!! | |
チュチュ――ン! | ![]() | |
そすいてウカとチュン坊は、人々が飢えないよう精一杯尽力したのだった。 | ||
しかし……。 | ||
グルルルゥ~。 | ||
チュゥ~ン……。 | ![]() | |
旅のさなか、チュン坊の腹の虫が盛大に鳴り響く。 | ||
ここ最近、ウカたちは忙しすぎるあまり、大好きなお米をずっと食べられずにいたのだ。 | ||
![]() | おお、すまんな、チュン坊……ソナタにひもじい思いをさせてしまって……。 | |
空腹で元気のないチュン坊を、ウカが励ますように優しく撫でる。 | ||
![]() | もう少しじゃ、チュン坊。社に帰れば、きっとたくさん米が奉納されてるはずじゃ! | |
![]() | そうしたら、米がたらふく食べられるぞ! | |
チュン……チュンチュン! | ![]() | |
![]() | うむ、その意気じゃ、チュン坊! | |
ウカとチュン坊は、もうひと踏ん張りと気合を入れ直し、自分たちの社へと向かった。 | ||
社に戻ったウカとチュン坊は、早速、米が奉納されているはずの蔵へ足を運ぶが……。 | ||
![]() | ど、どういうことじゃ……蔵が空っぽじゃと!? | |
ウカの期待に反し、蔵には米が全く奉納されていなかった。 | ||
チュ……チューン……。 | ![]() | |
バタッ! | ||
![]() | チュ、チュン坊! しっかりするんじゃ! | |
空腹が限界に達していたチュン坊は、ショックのあまり目を回し、倒れてしまう。 | ||
ウカは慌ててチュン坊に駆け寄り、必死に介抱する。 | ||
……腹減った。 | ![]() | |
![]() | え? | |
……………………チューン。 | ![]() | |
![]() | おおお、チュン坊ー! すまん、本当にすまん! ワタチの力が至らんばかりに……! | |
チュン……。 | ![]() | |
![]() | しかし、これだけ頑張ってもまだ米が足らんというのか……。 | |
![]() | ……やはり戦が収まらんことには、米不足は解決せんということかの……。 | |
ウカは、旅の行く先々で起きていた戦の場景を思い起こす。 | ||
戦乱は兵士として働き盛りの男を田畑から奪い、どうにか収穫した米も兵糧として奪っていく。 | ||
皆辛うじて食べていくのが精一杯で、ウカに奉納する余裕などないのだろう。 | ||
![]() | ……ああ、ワタチはどうすればー! | |
倒れるチュン坊を抱きかかえながら頭を悩ますウカ。 | ||
しかし、その時、ウカと倒れるチュン坊の周囲に〈穢れ〉が這い寄る! | ||
![]() | む! ヤツらめ、チュン坊が弱ったところを狙って襲うつもりか! | |
![]() | いくらチュン坊が丸々太って美味そうだからってそんなことワタチが許さんぞ! | |
チュチュン!? | ![]() | |
ウカは、チュン坊を守るために〈穢れ〉へ立ち向かう! | ||
(戦闘終了後) | ||
〈穢れ〉を追い払ったウカは、再びこれからのことを考えた。 | ||
![]() | ワタチに戦は止められんし、まったく、どうしたらいいのじゃ……。 | |
そんな時……、ウカの頭上から"黒い羽"がひらひらと舞い落ちる。 | ||
![]() | ぬ、この羽は……! | |
お困りのようですね、ウカ様。 | ![]() | |
黒翼をはためかせた小さな少女が、ウカの前にそっと降り立つ。 | ||
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![]() | おお、ソナタは……烏天狗のナゴミではないか! 久しいのう! | |
はい、お久しぶりです、ウカ様。さきほど〈穢れ〉の気配がしたので来てみたのですが……。 | ![]() | |
よろしければ、事情をお聞かせ願えますか? | ![]() | |
![]() | う、うむ。実はな……。 | |
ウカは、ナゴミにこれまでの経緯を語って聞かせた。 | ||
……なるほど。お米が奉納されなかったのでチュン坊様がお腹を空かせて倒れてしまったと。 | ![]() | |
![]() | チューン……。 | |
![]() | ウム……ワタチはともかく、なんとかチュン坊の分だけでも、とは思うのだがな……。 | |
……事情はよくわかりました、ウカ様。でしたら私から一つ提案があります。 | ![]() | |
![]() | なんと、それはなんぞや? | |
「喧嘩神輿とうなめんと」をご存知ですか、ウカ様? | ![]() | |
![]() | けんかみこし……ああ、アレじゃな。もちろん知っておるぞ。 | |
では、副賞である「願いが叶う目録」のことも? | ![]() | |
![]() | 当然じゃ……って、ナゴミよ、まさかワタチにそれを勝ち取れと申すのか? | |
![]() | 確かに、あの目録があればチュン坊にも腹いっぱい米を食べさせてやれるが……。 | |
![]() | ワタチは、喧嘩ごとはちと不得手でな……他の腕っ節の強い神々には敵わんじゃろうて……。 | |
いえいえ。今回はなぜか、これまで優勝した神々のみなさんがことごとく不参加なのです。 | ![]() | |
![]() | なんじゃと! それはまことか!? | |
はい、ですから、ウカ様にも優勝の目はあると思います。 | ![]() | |
そう聞くやいなや、ウカはずいっとナゴミに詰め寄った。 | ||
![]() | ナゴミよ! その喧嘩神輿とうなめんとの参加枠はまだ残っておるのか!? | |
あ、でしたらウカ様の参加受付はこちらで済ましておきますよ。実は私、受付兼司会者なのです。 | ![]() | |
![]() | おお、なんと! 渡りに船とはこのことじゃ! すまぬがよろしく頼むぞ! | |
そしてウカとチュン坊は、ナゴミに頭を下げた。 | ||
![]() | ソナタのおかげで希望が見えた。礼を言うぞ、ナゴミ。 | |
![]() | チュン! | |
いえいえ、そんな。同じ鳥族の神のよしみとして少しお手伝いしただけですよ。 | ![]() | |
はにかんだ笑みを浮かべるナゴミ。そしてウカは意気揚々とチュン坊に語りかける。 | ||
![]() | もう少しの辛抱じゃ、チュン坊。ワタチがソナタに腹いっぱい米を食べさせてやるからな! | |
![]() | チュンチューン! | |
喧嘩神輿とうなめんとへの参加を決意したウカ、そしてチュン坊。 | ||
すべては、美味しいお米をお腹いっぱい食べるために──! |
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